峰宗太郎、山中浩之『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』(日本経済新聞出版)

2021年、いま読まずしていつ読む、という感じの、これ。

だいぶヒネったタイトルだが、これは良書。電子書籍ではなく紙で買うべきだったかもしれない。

ひとまずAmazonの商品ページで目次を見てもらえば分かるように、非常に情報量が多いのだが、「素人」ポジションの編集者が対談形式で専門家に話を聞くという構成なので、取っつきやすい(ただし私としてはだんだん冗長に思えてくる…)。

普及が期待される核酸ワクチンが孕んでいるリスクについてもたっぷり紙数を費やしているので、「ワクチン絶対拒否」派も(理論武装を兼ねて)ぜひ読んでおくべきだと思う。帯の「日本人がワクチンを打つ前に知っておくべきこれだけの真実」というフレーズも、いかにもという感じで、やり過ぎと思えるくらいの営業戦略が窺われる(笑)

また、とにかく無症状者にもガンガンPCR検査しないとダメだ、という「無制限PCR検査」論がいかに机上の空論であるか、そして感染拡大を防ぐのは「とにかく検査」ではなく○○○○であるという点も丁寧に書かれている。この本を読むと、公表されている数値をもとにいろいろ自分で計算してみたくなるのが面白いところ。

この本で特に優れているのは、ウイルス・免疫の専門家である峰氏が、科学者という立場にありながら、科学の限界をきちんと認識し、それを言葉で表現している点。そのうえで、「広報戦略と、やはり政治力」(第5章)の重要性を指摘しているところ。

しかし、「こうやって長いお話をゆっくりと読んでくださる方は、俗説や過激な話には、簡単に騙されることはないと思います」(第4章)とあるのだが、「コロナはただの風邪」や「ワクチン絶対拒否」、あるいは「無制限PCR検査」の人たちには、この本を読んでいる暇などない(婉曲表現)というのが残念な現実なのだ…。

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