ホルクハイマー、アドルノ『啓蒙の弁証法-哲学的断想』(徳永恂訳、岩波文庫)

先に読んだ『シンメトリーの地図帳』は一般向けとはいえ分野としてはかなり専門的な数学なのでわけが分からなかったけど、これは自分の領分である哲学・思想系なのだから行けるだろう…と思っていたら、かなり難渋した。なかなか進まず、二週間以上かかった(笑) 最近この手のものを読んでいなかったからかなぁ。

とはいえ、難解だと思いつつもゴリゴリ読み進めていけば、しだいに著者の世界に頭が馴染んでいくもので、訳者あとがきを読む頃には、「うんうん、そういう内容だったなぁ」と思えるくらいには理解できたような気がする。

晦渋ななかにも、なるほどと膝を打つ指摘はあちこちにあって、一つだけ紹介しておくならば、

「言うまでもなく被支配者たちは、上から与えられたモラルを、支配者自身よりももっと真面目に受けとるものだが、それと同じく欺かれた大衆は、今日では、成功した者たちよりはるかに成功神話に陥っている」(本書p276)

あと、「反ユダヤ主義の諸要素」の章は、いまの日本で見られる諸々のヘイトスピーチを考えるうえでも、もちろん大いに参考になる。

図書館で借りたのだけど、買うべきか…。

いずれにせよ、他の読書へとつながっていく本というのは嬉しいもので、来年は『イーリアス』『オデュッセイア』を読むことになるような予感。

 

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