石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社現代新書)

このテーマに関しては池内紀や舛添要一の近著が話題になっているようなのだけど、「基本的にはこのあたり(つまり本書と、もう一冊何か挙げられていたはず)をお勧めしたいというのは変わっていない」と誰かが書いているのを読んで、手に取ってみた。

ヒトラー/ナチが民主的な手段により政権を握ったという俗説があるけど、実際の経緯を知ると、とうていそんな穏やかな話ではないことが分かる。

何はともあれ、民主的な社会と基本的人権は石にかじりついてでも守らないとこういう流れになってしまうのだな、ということはよく分かる。経済や外交でいくら美味しい話があっても、その部分で妥協しては絶対にダメなのだ、と。

なおヒトラーの経済政策が成功したことで国民の心をつかんだという話もあるけど、その一例とされる失業問題の解決については、なんだそりゃという感じ。確かに街中で見かける失業者は減ったのだろうけど、そのことをもって「失業問題を解決した」と称するのは、それはいくら何でもあんまりだろうという印象。

たとえば昨今の経緯によって、もはや日ロ間に北方領土問題というのは存在しなくなったと言っても、少なくとも当面のあいだは大きな間違いはなかろうけど、それをもって「安倍政権が北方領土問題を解決した」と胸を張れるのか、というような話。

宣伝の恐ろしさというものを感じる。

 

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