シェイクスピア『ソネット集』(岩波文庫)

まぁ憂鬱なことの多い世の中なので、それに合わせた問題意識で本を読んでいると、今ひとつ楽しい読書にならない。そこで、たまには浮き世離れした本を読んでみる。

もともと、4月にアガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』を読んだときに、タイトルの出典である(小説中でも言及されている)シェイクスピアのソネットって全然読んだことないなぁ、一度くらい読んでみてもいいかなぁ、と思ったのがきっかけ。kindleだと原書は無料で入手できるので、必要に応じて参照することにして、岩波文庫版を購入。

浮き世離れした読書をしたいという目的は完全に満たされます。

まぁ何かの折にこれを引用して、などという洒落たことをする機会はまず来ないだろうけど(笑)、うん、やはり古典はよいですね。時空を超えている。

愛する者の美しさを自分の詩という形で永遠に残すのだ、彼の命はもちろん失われ、建物が朽ち果て、墓碑銘も消え去っても、詩の形で残せば残るのだ、と大言壮語をかましたシェイクスピアは、本当に数百年後にも自分の詩が、遠くジパングの地でも読まれると想像していただろうか。「数百年? 私のいう永遠には、それでは遠く及ばない」と言い捨てるかもしれない…。

翻訳は、もちろん体裁は整えつつも、意味がしっかり伝わることを旨としているものなので、雅趣のある韻文に仕立て上げられているわけでもなく、その点では物足りないと言えば物足りない。この訳文を記憶に刻むという種類のものではない。その意味で、もっと古い(坪内逍遙とまではいかずとも)訳詩を読んでみたい気もするのだが、この訳ももう30年以上前のものなのだなぁ…。

 

 

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