近藤史恵『サヴァイヴ』(新潮文庫)

「白石誓」を一人称の主人公とするロードレース連作からスピンアウトした格好の短編集。同じく白石の視点から描かれるエピソードもあるけど、メインは、彼がデビューしたときのチームの先輩であった「赤城」視点の3本。

「一生ゴールを目指さず走り続ける選手の気持ち」という言葉が、赤城/白石という「アシスト」の立場からサイクルロードレースを描くという、作者の選んだ視点をうまく象徴している。

そして、出色は、J Sportsのサイクルロードレース番組で解説者(時に実況も)としてよく知られる栗村修による解説。作品に対する手放しの絶賛であるにもかかわらず、こうした作品を支えているのが現実の選手たちが展開する競技や喜怒哀楽なのだということを痛感させるという点で、ある意味、作品本体を凌駕する印象を与える解説である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください