というわけで、サイクルロードレースものの長編第三作。
第一作『サクリファイス』についても言えるのだが、登場人物がめぐらす策謀(プロット)が、やや作為的にすぎる気がする。いや、策謀なのだから作為的なのは当たり前なのだけど、ヒネりすぎて無理があるように思う。
具体的には(以下ネタバレ注意)、登場人物の一人が序盤で主人公にある依頼をするのだが、むしろその依頼は、その登場人物がめざすもの達成を妨げてしまう結果になっていないか。全体的に、目標の設定と、そのために選択する手段のバランスが取れていないようにも思う。
それとも、主人公の推理が「考えすぎ」だったのか。こちらの方が可能性は高いように思うけど、そうするとこの小説のプロットが死んでしまう。う~む。
というわけで、やはりこの連作、ミステリとしては今ひとつのような気がするのだ(笑)
(追記:『エデン』はよく出来ている。人の生死に関わる部分はとてもパーソナルな話なので「謎」としては小粒であり「ミステリ」と呼ぶにはふさわしくないかもしれないけど、感情の機微をうまく描いている)
とはいえステージレースの展開は前作同様に面白いし、主人公の人格描写という点で、いよいよ彫啄が進んできたようだ。つまり、彼にとって自転車で走るとはどういうことなのか、という哲学めいた問いへの答えが、作を重ねるごとに鮮明になりつつあるように思える。そして、私としては、このシリーズのそういった部分がとても好きだ。