角田光代・河野丈洋『もう一杯だけ飲んで帰ろう』(新潮社)

考えてみれば、私にとってこの手の飲み歩き・食べ歩き本というのは、たいていの場合は先達、つまり自分よりも年上で世慣れた、いろいろ良い店を知っている「大人」が書くもの、という位置付けだった。しかしこの本を読んでいて、ふと「あれ?」と思って著者紹介を見たら、角田光代は私と同年代だった。

うむ、自分もそれくらいの年になってしまったのだなぁ。

そして、この本で紹介されている店は、わりと自分の行動圏に近いエリアが多いのだけど、では、この本で魅力を感じた店に行ってみようかという気になるかというと、それはない。

これまでご縁のなかった新しい店を積極的に開拓していこうという意欲が低下しているのも年齢ゆえかもしれないし、そもそも、これまで自分が馴染んでいた店がそれなりにあって、外食するのであれば、むしろ「あの店しばらくご無沙汰しているなぁ、久しぶりに顔を出さないとなぁ」という動機の方が大きくなっている、というのもある。

あと、共著者2人の食べ物の趣味は異なっているようだが、どちらかと言えば、肉・辛いもの・エスニック系に向かいがちな角田光代よりも、出汁・野菜系が好きというパートナー・河野丈洋の選ぶ店がもう少し多く採用されていれば食指が動いたかもしれない。

そういえば角田光代の作品はこれまで一冊も読んだことがないのだけど、これを機に何か読んでもいいな、と思った。河野丈洋という人については、ミュージシャンのようだけど知らないなぁと思って読み進めていったら、自分が観た芝居の音楽を担当していた人だということが分って(この本では2作品が出てくる)、びっくり。そういえばその劇団のパンフレットに主宰と角田光代の対談も載っていたな。ご縁があるのか。

 

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