戸谷洋志『Jポップで考える哲学 自分を問い直すための15曲』(講談社文庫)

先日読んだ『棋士と哲学者』が期待以上に面白かったので、「哲学者」側である戸谷洋志の単著を読んでみた。哲学的なテーマに沿って、いわゆる「Jポップ」(最初の方で定義される)15曲の歌詞を通して考えていく、という本。

テーマは、「自分」「恋愛」「時間」「死」「人生」の5つ。

曲は「名もなき詩」(Mr. Children)「私以外私じゃないの」(ゲスの極み乙女)「君の名は希望」(乃木坂46)「Story」(AI)「会いいたくて会いたくて」(西野カナ)「誰かの願いが叶うころ」(宇多田ヒカル)「天体観測」(BUMP OF CHICKEN)「キラキラ」(aiko)「閃光少女」(東京事変)「おしゃかしゃま」(RADWIMPS)「Dearest」(浜崎あゆみ)「A new one for all, All for the new one」(ONE OF ROCK)「Believe」(嵐)「RPG」(SEKAI NO OWARI)「YELL」(いきものがかり)。

このなかで私が聴いたことがあるのは1曲だけ。といっても基本的には歌詞分析で、歌詞は本文中に引用されているので、曲を知らなくてもまぁ問題はない。

なかなか面白かった。5つのテーマについての考察は、哲学の考え方というかアプローチを紹介するという上でけっこう的確であるように思える。

もっとも、テーマが「実存的な悩み」に偏ってしまっているのは少し残念。哲学という学問はけっこう幅が広くて、二本柱(?)の認識論・存在論も含めて、もっと頭のおかしくなるようなヤバいテーマもあるのに、ともったいない気もするけど、さすがにそういうテーマに触れるような歌詞のポップソングはなかなか存在せず、この本には盛り込めなかったのだろう。そんなテーマの歌、あまり聴きたくもないという気がするし(笑)

体裁としては、女子大生の麻衣ちゃんがアシスタント(聞き役)として、先生(著者自身だろう)と対話するという形になっていて、恐らく糸谷哲郎はそのへんに眉をひそめつつ読んだのだろう、と想像する。が、そもそもそういう舞台設定に目くじらを立てるような人を対象とする本ではないな。

【追記】読んでいるあいだは「別にこれを読んでも、取り上げられている歌を聴きたくはならないかなぁ」と思っていたのだけど、それでも何となく気になって、Spotify(無料アカウント)で聴ける曲を選んでプレイリストを組んでみた(3曲ほど見つからない曲があったのでそれは諦める)。生まれて初めてナンバー系グループの曲を通して聴いたな……。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください