野矢茂樹・西村義樹『言語学の教室』(中公新書)

たぶんAmazonのお勧めに引っかかったのだと思う。

野矢氏についてはウィトゲンシュタイン関係の訳書や研究書を買うだけ買って、難しそうなので手を付けていない。『哲学の謎』は読んだ気がするが、あとは少し前にエッセイ『哲学な日々』を読んだくらい。

この本は、チョムスキーの生成文法論に対する批判から生まれた認知言語学という分野について、野矢氏が専門家である西村氏に入門していろいろ聞いていくという構えなのだけど、何しろ野矢氏も言語哲学の専門家なので、まるでウィルキンソンとベッカムがキックを蹴り合っているような趣がある(←分らん)。認知言語学という分野の特徴なのか、一般向けの本としての配慮なのか、分析の対象とする例文、表現がどれも身近で平易なもの(日本語だと、「雨に降られた」「彼女に泣かれた」「村上春樹を読んでいる」)なのでとても読みやすいのだけど、言っている内容自体は、けっこう人間の認識というか知性のありかたに踏み込むような深さがあるように思う。

こういう表現を使う言語と使わない言語があるといった部分はもちろんのこと、翻訳をやる身としてはかなり楽しめる本だった。

あと、各章の扉にあるペンギンのイラストが可愛い。イラストレーターは誰だろうと思ったら、野矢氏自身とのこと。やるな。

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください