サイモン・シン『フェルマーの最終定理』(青木薫訳、新潮文庫)

どなたかがTwitterで紹介していたので読んでみた。この文庫版が2006年、単行本が2000年出版とそれなりに古いのに、数学分野でAmazonのベストセラー1位になっているのも頷ける傑作。

私自身は下手の横好きというか、数学関係の本はときどき手を出しているので、たとえば本書の「補遺」に収録されている程度の話は目で追うだけで理解できるのだけど、それはつまり、私にでも分かるその程度の証明でさえ本文からは追い出しているという意味なので、実際のところ、目にする数式は、本題であるフェルマーの最終定理の式の他いくつか散在しているだけで、しかももちろん、それらの式の操作を理解することは読者には求められていない。

にもかかわらず、証明に至る戦略というか、どういうアプローチによって苦心を重ねたか、何が成功のきっかけをもたらしたかということは、素晴らしくよく伝わってくる。

いわば、世界の最高峰に登頂する登山家たちを上空からのテレビ中継で眺めているという印象。もちろん自分自身では登頂できるわけはないし、彼らがどのように身体を使っているかという細部はまったく理解できないのだけど、どういうルートを試み、他のスポーツ用に開発されたアイテムが使えるのではないかと試し、また行き詰まり、別のルートに切り替えてアプローチしているかはよく分かる。つまり、中継チームの腕がいいのである。むろん、そのような登山の実況中継など至難の業だろうという点も含めて。

実際には読んでもらわないと説明は難しいのだが、やはり面白いのは「橋を架ける」話のあたりかなぁ。

図書館で借りて読んだのだけど、これは家人も読みそうだし、買うことにしようかな。

 

 

 

 

 

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