Amazon.co.jp: 釜石の夢 被災地でワールドカップを (講談社文庫): 大友 信彦: 本.
何より、「電車のなかでは読めない」話である。今の季節なら、汗を拭くふりで誤魔化すしかない。
「ラグビーのファンで本当に良かった」と思える本だが、必ずしもラグビーの本ではない。前に投げたらダメ程度の話すら出てこない。「ラグビーは好きだけど、昔のラグビーは知らないし」という最近のファンにも、むしろお勧めしたい。
「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ」というコピーが、その空虚さを批判された。
まだ仮設住宅から出られない被災者もいるのに、膨大な金を使ってスタジアムを作るなんて論外だ、という意見があった。
巨大なスタジアムを作っても、イベント終了後は赤字が積み上がっていくだけだ、という指摘もあった。
いずれも真っ当な批判だと思う。しかし、それも「時と場合によって」なのだ。
批判に対してきちんと答えを出した例が、これだ。新国立競技場をめぐる迷走に欠けていた要素の、すべてとは言わないまでも、その多くがここにある。そしてこの本は、「コミュニティ/文化にとってスポーツとは何か」という問いへの一つの答えにもなっているように思う。