雑誌『東京人』に連載されているコラムをまとめたもの。2019年から2021年にかけての文章なので、後半はコロナ禍で行動を制約されている嘆きが多く読んでいて辛くなるが、いや、それでもけっこう動き回っているなぁ。
「誰某がこの駅で降りている」「誰某がこの街について書いている」、だからここを訪れたくなった、というパターンがたびたび出てくるのだが、いずれ「川本三郎が書いていて興味を惹かれたので来てみた」という人も、それなりの数、出現するのではなかろうか。いや、すでにそういうファンはいるのかもしれない。
こういう本を読むときには、Googleマップなどパソコンで眺められる(検索できる)地図を片手に(という表現は変だが)読むと、さらに楽しめるような気がする。もちろん、著者自身は絶対に使っていないはずではあるが。
それにしても、読んでいない作家がいろいろ出てくるなぁ。野口冨士男は読んでいなくてもしかたなかろう(少なくとも私の周囲でこの作家を読んでいる人を知らない)。林芙美子は少しくらい読んでおくべきかもしれないし、紹介されている台湾の作家はなかなか面白そうだが、そこまで手が回るかどうか。
しかし、松本清張を一冊も(!)読んだことがないというのは、さすがに自分としてもどうかと思う。調べてみて、松本清張が芥川賞を受賞していることを初めて知った(というか、むしろ、それで世に出た作家である)。
ひとまず、この本を買ったのと同じ駅前の書店で、『点と線』を買ってきて読み始めている。そういえば、この本が9月末に出たことを知ったキッカケも、その書店のツイートだった。