著者のツイートに惹かれて、読んでみた。
刊行が2012年4月ということは、脱原発官邸前抗議や、SEALDsを中心とする若者のデモ・抗議行動が高揚を迎えるより少し前である。
したがって、そうしたデモがその後かなりの程度沈静化してしまった状況やその原因を分析するには至っていないのは決して本書の不備ではない。とはいえ、現時点で本書を読んでも、「そりゃ、確かにあの頃はそうだったのだけど」という印象が強く、そこからどうして今の状況に至ったのかという点に思いを馳せざるをえない。もちろん新型コロナ禍で「人が集まる」こと自体が避けられるようになったという要因は大きいのかもしれないが、当然、それだけではないような気はする。
そもそも、自分で何かを考えたり自分の意見を表立って主張することが忌避される、とまでは言わずとも積極的に評価されない社会においては、著者のいう「暴力から祝祭へ」というデモのイメージの変化も、それほど決定的に社会を変える勢いにはつながらなかったのではないか。そもそも、広告代理店主導の国家的イベントで皆と一緒に盛り上がる状況を別にすれば、「祝祭」を自分たちで作り上げていくこと自体、この社会の人々はあまり得意にはしていないようにさえ思うのである。