竹内康浩・朴舜起『謎ときサリンジャー 「自殺」したのは誰なのか』(新潮選書)、小林秀雄賞受賞記念…というわけでもないのだが、昨年、同書を読んでやはり読み直したくなって買っておいたサリンジャーを読む(『大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア・序章』も買ってある)。
たぶん大学生の頃に一度読んだきりで、当時はそれほどインパクトがなかったのは、訳者の村上春樹が書いている印象と似ている。
若者を主人公にしているものの、それなりに年を重ねないと理解できない作品なのかもしれない。とはいえ、残念ながらというべきか、それともそうではないのか、何らかの理解を得られたと思ったときにはすでに遅いというか、いくぶん苦い後悔のようなものを抱かざるをえない。もちろん世の中には、もっと若い時分にこの作品から多くを得ることのできる優れた人もいるのだろうけど。
ま、もっと早く読み直していればという気はしつつも、これから何年生きるか分からないけど、それでも今読んだ意味はあるはずだ。
それにしても、Amazonの惹句にある「ズーイは才気とユーモアに富む渾身の言葉で、自分の殻に閉じこもる妹を救い出す」というのは、ずいぶんシンプルな解釈だなぁという気がする。そういう話ではない。