本好きのあいだでわりと評判がいいようなので、買ってみた。直接のキッカケは、この記事だったかな。
古書店に行きたくなるし、本を買いたくなるし、手紙のやり取りをしたくなるが、残念ながら最後の一つについては、自分の場合はもう電子的な手段によるメールやメッセージのやり取りになってしまうだろうなぁ……。
私も含めてたいていの読者は、著者であり手紙のやり取りの一方であるへレーン・ハンフの視点で読むのが自然なのだろうが、ロンドン側の視点で読み直すのも面白いかもしれない。
ドラマではないので、特にこれといった出来事が起きるわけではないのだけど、いろいろ思うところの多い本。
へレーンの言葉がいろいろと面白い。「読んでいない本は買わない」(図書館で読んで、好きになった本を買う)とか、「書き込みがあると、前の持ち主とつながれる気がして嬉しくなる」とか。
あと、第二次世界大戦が終ってしばらくは、アメリカよりもイギリスの方が圧倒的に貧しいというか、食料を始めとする物資が欠乏していたのだな、というのは、当たり前のことなのだけど今さらながら感銘を受けた。そして、そうやって貧しくても、文化(この場合は古書)の面で新興の富裕国の心ある人にとって憧憬の対象になっている存在というのは、なかなか良いポジションであるように思う。
ちなみに私はこの本を読んで「乾燥卵」なるものの存在を初めて知った。
翻訳は江藤淳。評論家、保守派の論客という印象だったけど、翻訳もやっているのだな。「洋服」とか「お釈迦様でもご存知ない」とかいう表現が出てきて、いかにも昔の翻訳だなぁという印象は拭えない…。