これまた、田畑暁生氏の紹介で知った本。
統計については、一度しっかり勉強したいと思いつつ、果たせていない。この本は体系的な統計入門というわけではないが、報道で出てくる数字が誤解を生み出してしまう例がふんだんに紹介されていて面白い。正確なデータと出典が示されている(つまり虚偽ではない)からといって、報じられている内容に信憑性があるわけではない。
とはいえ、頭では分かっていても、なかなか徹底できないものだよなぁ…。本書で紹介されている例のうち、サンプルの規模や偏り、チェリーピッキングが招く誤解や、統計的に有意であるからといって意味があるとは限らない、といったあたりについては自力でも思い至りそうだが、交絡因子や合流点についてはなかなか難しい。
ちなみにこの本で紹介されている中でいちばん興味深かったのは、「新型コロナの初期の段階で、感染者・重症者に占める喫煙者の比率が低かった」という事例。もちろん、喫煙習慣が新型コロナの予防・重症化防止に役立つわけはなく、むしろその正反対なのだが、どうしてこのような結果(それ自体は嘘ではない)が出てしまったのか。
翻訳には特に問題を感じなかった。しかし、英国流の諧謔というのか、各所に冗談がちりばめられていて、そのおかしみを伝えるのはなかなか難しそう。感じ取るのは読者次第か。