それにしても紫の上は、幼少時に拉致(?)されて以降、基本的には、いわば御簾の内だけで生活しているわけで、たとえば海を見ることなく死んでいったのだろう。対照的なのは玉鬘で、はるばる九州にまで渡り、船旅も経験したであろうし、おそらくはさまざまな見聞を重ねた上で帝に嫁いでいる。源氏自身も、不遇の時期がなければろくに海など見ることもなかったはずだ。現代においては、一般論としては、社会的に上位の人間の方が国外に足を運ぶなど見聞を広める機会に恵まれているところ、この時代には地元から一歩も離れずに生活できることが特権だったのだろう。「歌枕見て参れ」が左遷の辞令なのだからなぁ。
それにしても夕霧、父親に輪をかけてしょうもない奴…。
さて本編はこの巻で終わり。「宇治十帖」はどんな話なのだか、本編以上に、よく知らない。