小田中直樹『歴史学ってなんだ?』(PHP新書)

ふと見かけた著者のTwitter投稿がキッカケで読んでみた。

「事実(史実)を知ることは可能なのか」「歴史(学)は役に立つのか(役に立つとすればどのように役に立つのか)」といった問いを軸に、タイトルの「歴史学ってなんだ?」というテーマを突き詰めていく本。例として挙げられる従軍慰安婦論争というセンシティブな問題については、三者三様の立場をもう少し整理して提示してほしかったような気もするが、二つの問いへの取組み方は誠実な印象を受けるし、自然科学との対比はもちろん、哲学からサブカルチャーに至るまで、著者の幅広い関心を反映した考察は面白く、そこから引き出される結論も納得がいく。

何よりこの本が危険なのは、紹介されている参考文献が魅力的なこと。特に直接歴史に関わる文献は新書や○○ライブラリーなど著者の言う「啓蒙書」中心で、非常に取っつきやすそう。著者が「愛読書」という良知力『青きドナウの乱痴気』を筆頭に、網野善彦『日本社会の歴史』や松田素二他『新書アフリカ史』が気になるところ。

背伸び志向のある高校1~2年生がこの本を読んで歴史家を志してほしいものだが、さすがに難解だろうか。いや、けっこう読めるのではないかと思うが。

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