池田晶子『14歳からの哲学』に続き、「哲学とはどういうもので、何がその魅力なのか」を人に伝えるとしたら、どんな伝え方があるだろうか、というテーマでの選書。
ほぼ並行して読んでいた同じ野矢さんの『哲学の謎』と合わせて、なかなか良い本で、『謎』よりもこちらの方が読みやすい。『14歳からの哲学』と違って「答えを言ってしまう」という押しつけがましさも薄いような気がする。「ことば」についての思索の比重が大きいのは、論理学に強い著者の面目躍如といったところか。
哲学史的な知識はほとんどまったく出てこないが(わずかにプラトンが引用されているくらい)、すなおに、ただし徹底的に考えるとはどういうことか、は分かるのではないか。
あまりにもやさしい言葉で書かれているので、この本を読んでから、では何か他にも読んでみようと哲学書を手にとっても、ちょっとギャップが大きくて辛いかもしれない。しかしある程度哲学書を読んでから、ふとこの本に戻ってみると、まさに「はじめて考えるとき」はこのようであった、という原点に戻れるようにも思う。
植田真の挿絵は、言ってみれば、この本の「謎」である。私はつい野矢さんの書く本文だけを追ってしまうのだけど、この挿絵がどういう位置づけで何を意味しているのか、というのをじっくり考えてみるのもまた一興だろう。