ギャヴィン・プレイター=ピニー『「雲」の楽しみ方』(河出文庫)

仕事(原稿)を通じて知った何かに興味を惹かれて関連の本を読む、ということをやっていると、何しろ「何でもあり」の翻訳屋稼業、対象が広がりすぎて収拾がつかない(そもそもそんな暇もない)のだが、たまに、つい読んでしまうことがある。これもその一冊。

良い本。

家人の影響で、昨年、野尻抱影の『新星座巡礼』を読んだけど、あれと同じように、やわらかなエッセイ調でもあるのに情報量が多く、楽しいのに読むのが大変、消化しきれない、という類いの本。

しかし、「雲」を楽しむという趣味が、たとえば「星」「樹」「野鳥」などを観る楽しみに比べてありがたいのは、「雲」はどんなに都市化されていても、それなりに楽しむことができるし、かなり特殊なものを除けば、特定の地域でなければ観られないというものもないし、ある意味、ほぼ天候にかかわらず目にすることができる(雲一つない快晴が続けば観られないが、それはそれで気持ちのいい話である)。

ただその分、歩いているときにふと空を見上げて雲に注意を奪われる頻度も高くなるだろうから、足下には気をつけた方がいいのだが。

いきなりこの本を読むと、雲の判別の説明について行けない部分が多々あるのだけど、「こういうところに注意するのだな」ということは分かってくるので、読了後、少し雲を観察する経験を重ねてから再読すると、たぶんもっと楽しめる(この本も、雲を見ることも)のだろう。

残念ながら写真はモノクロなのだけど、フルカラーで雲の写真が見たければ、訳者後書きでも示唆されているように、著者が立ち上げた「雲を愛でる会」のウェブサイトを覗けばよいはず。

 

 

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