Twitterで知人が言及していて、そういえば以前買ったような気もするが手許にないので、図書館で借りて読了(出版時期からして、買ったのは単行本の方だったかもしれない…)。
「京都や奈良がほとんど空襲を受けなかったのは、米国が両都市の文化遺産を尊重して攻撃しなかったからだ」という伝説が虚構であることを、米軍側の史料と実際の空襲の記録に基づいて明らかにしようとする本。
実際には、京都や奈良が空襲による壊滅的な被害を受けることはなかったという結末を知っていても、淡々とした叙述のなかに、「その日」が近づいてくる緊迫感はひしひしと伝わってくる。
実際のところ、あの戦争にそのような美しいエピソードがあったと思いたがる心性は、次の「それ」に対するガードを甘くすることになりはしないか。戦争は何よりもまず当事国の国益を最優先して進められるものであり、ほとんどの場合、それ「だけ」で終るのだ。