橘玲『朝日ぎらい』(朝日新聞出版)

なかなか面白いネタが詰め込まれた本。ただし、その根底には極左から極右(及びその劣化コピーとしてのネトウヨ)に至る一連の態度の類型化があり、紹介される種々の「実験」も、どうもサンプル数からしてそこまで信頼性が高いものではないように見えるので、まぁ話半分に面白がるくらいがよいのだろう。

結局のところ、現実のたいていの人間は複数のアイデンティティを兼ね備えているのだし、したがってリベラルや保守といった(本書ではもっと細分化されているが)類型にはフィットしない。むしろそうしたマルチなアイデンティティに注目することこそが分断の緩和~共生への道につながるようにも思う。著者は、リベラルに対する批判に抗するには、さらにリベラルに徹するしかない(というときの「リベラル」はもう少し細かく言えばリバタリアンなのだが)、という選択肢を提示するのだけど、それは原理主義的な「無理筋」だろうなと思う。「リベラルはダブルスタンダードを批判される」という指摘は的確に見えるけど、むしろ、ダブルスタンダードではない、マルチスタンダードだ、とある意味で開き直る、というか、スタンダードが複数であることに対してオープンである方が優るのではないか。

まぁ、複数の(多数の)アイデンティティやスタンダードを備えるというのは、要するに教養主義的な方向なのだろうけど。

 

 

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