書店で見かけて、対談ということもあって厚さのわりにスカスカな組み方という印象があり、面白そうではあるけど買うほどではないかな、と(スペースに余裕のない我が家としては、どうせ買うなら厚さのわりに濃い本の方がありがたい)。で、図書館で借りたのだけど、案に相違して、これがなかなか良い本だった。
SEALDsもそうだったけど、自分より大幅に若い人たちがこれだけしっかりしている(いや、当然ながら自分よりも頭が良い)というのは、非常に心強いというか、希望を感じる。特に糸谷は、自ら原理主義と称するほど人権重視の立場を貫いている(といっても頭のいい人なので、自分のような立場は白人文化至上主義だと批判される、と笑うようなメタな視点も備えている)。
「棋士と哲学者」というタイトルにはなっているが、「棋士」側である糸谷も大学院まで行って哲学をやっている人なので、その方面でも互角以上に渡り合っているのが面白い。AIをめぐる議論においては、むしろ戸谷の方がナイーブに思えてしまうくらい。そして、むしろ将棋の話はもう少しツッコんだ部分があってもよかったのではないかと思う(戸谷はどれくらい指せるのだろう?)
ところで、この本を読んでふと思ったのだけど、「棋士と哲学者」、つまり将棋と哲学というジャンルにおいて、私自身は、将棋でいえばアマ初段には及びもつかず、良くて3~4級程度(いや5~6級?)だろうと思うのだけど、哲学に関しても、まぁその程度かなと。プロの作品(哲学なら関連の著作、将棋なら棋譜)を、流れを追いつつ楽しむことはできるけど、100%理解できるわけではない。いわんや、自分でそのレベルのものを生み出すことはできない。その意味で、棋士と哲学者の対談というのは、どちらに対して理解が偏るということがなく、ちょうどよく楽しめたようだ。