これも8月の早川書房kindle半額セールで購入。
たっぷりとしたボリュームと内容の「しんどさ」ゆえに、読了に時間がかかったが、たまたま本庶氏のノーベル医学・生理学賞受賞とタイミングが合ったこともあり、興味深く読んだ。
こういう本を読むと、いずれ自分ががんになった場合でも、いわゆる代替療法を試す気にはならないだろうなぁ、と思う。これだけ複雑ながんの仕組みが、先人の努力と苦労の甲斐あって、ここまで解明されているのだから、それに「乗っからない」手はないよな、と。
しかしその一方で、この本を読んでいると、手術にせよ化学療法にせよ放射線にせよ、非人道的とさえ言いたくなるような治療がどれほど行われてきたかというのも思い知らされるので、代替療法にすがってしまう人の気持ちも分からなくはないのだよね…。
がんの克服に向けた辛い道のり(まだ終っていない)が本書のメインなのだけど、がんが死亡原因の上位に進出してきたのはそれほど昔のことではない(昔は、がんになる以前に、今では治しやすい病気で若くして死んでしまっていたから)とか、決定的な治療法が発見されるよりも先に死亡率が大きく低下した疾病はいくつもある、みたいな話も面白い。
※ そして本筋とは関係ないけど、ところどころに「正常細胞はみな同じだが、悪性細胞が不幸にも悪性になるまでには、それぞれ独自の経緯を経ているのだ」みたいな遊びがあるのが良い。これは『アンナ・カレーニナ』だけど、「確かこれ、『ノルウェイの森』にあったのでは」という一節も見つけた。