ブライアン・W・オールディス(訳・伊藤典夫)『地球の長い午後』(ハヤカワ文庫SF)

以前からタイトルだけは知っていたSFの古典(だと思う)。何かの拍子にふと思い出し、読んでみた。

地球の自転が止まり、太陽に照らされ続ける半球では植物が進化・繁茂して地上の支配者となり、反対の半球は闇と寒さに覆われた死の世界になる、という設定。ほとんどの動物が絶滅するか植物の支配下で細々と生きるなかで、大幅に退化し、わずかに生き残った人間の物語。

奇想天外、荒唐無稽。まさに空想科学小説というか、奔放な想像力/創造力の産物という感じ。『スターウォーズ』的に奇抜な生き物もふんだんに出てくる。

ただ残念ながら、それほど面白いとは思わなかった。私がSFとして最も楽しめるのは、誰かが小松左京のいくつかの作品について言っていた、「一つだけ大きな、ものすごく大きな嘘をつき、その設定のもとで、それ以外の点については徹底的にリアルである」というタイプなのだと思う。

「これ、収拾つかないよな、三部作とかで続きがあるのかな?」と思っていたら、バタバタと一気に終った。読後ちょっと情報を探ったら、元々は5編の短編集だったものを1本の作品としてまとめたらしい。展開の無理矢理感は、そのせいかもしれない。

 

※ ネタバレになってしまうのだけど、これまた『スターウォーズ』に喩えれば、先輩ジェダイたちが「我々の時代は終った、後は君たちに任せる」と遠方に去るのだけど、その遠方の地である秘密に気づき、帰還の旅に出発する。残されたルークたちが生命の危機にさらされながら奮闘しているのだけど、先輩ジェダイたちは全然戻ってこないので、観客である我々はやきもき。ついに戻ってきたと思ったら、どちらかと言えば敵役だった奴の話に納得して、そいつと一緒に「じゃ!」とまた遠方に去ってしまう。ルークたちが一緒に行かないというのは自主的な判断なのだけど、観客としては「え~っ!」という感じ(笑)

 

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