2012年に読んだ本

2012年の読書メーター
読んだ本の数:93冊
読んだページ数:26937ページ
ナイス:204ナイス
感想・レビュー:91件
月間平均冊数:7.8冊
月間平均ページ:2245ページ

蕎麦打蕎麦打感想
心弾む本。蕎麦打ちの修業時代に入ってからよりも、むしろ八ヶ岳での生活を始めるあたりが印象に残っている。子どもの頃から模型制作に始まり、物作りが好きだったというあたりに、「光るマーブルチョコおむすび」を思い出してニヤリ。
読了日:12月26日 著者:加藤 晴之
金曜官邸前抗議 ---デモの声が政治を変える金曜官邸前抗議 —デモの声が政治を変える感想
参加者の一人として、興味深く読む。あの抗議行動が、いかに微妙なバランスの上に成り立っているのか、よく分かる。
読了日:12月23日 著者:野間 易通
それでも自転車に乗り続ける7つの理由それでも自転車に乗り続ける7つの理由感想
5年前の本ということで、それ以降の著書を読んでいる者にとっては、やや古さを感じさせる部分もある。しかし、後半の道路交通法改悪阻止の動きを綴った部分はなかなか読ませる……。
読了日:12月19日 著者:疋田 智
原発ゼロ社会へ! 新エネルギー論 (集英社新書)原発ゼロ社会へ! 新エネルギー論 (集英社新書)感想
有用な知見はいくつか得られる本。しかし基本的に「(原発推進派はもちろん、脱原発派も)自分と同じ立場以外の者はダメ」という論調なので、説得力は大幅に低下している。伝統的左翼のセクト主義かな。そのわりに「あとがき」では、そういうダメな脱原発派も大勢含んでいるはずの官邸前抗議行動の参加者への連帯が表明されているのが、むしろ意外なくらい。しかし「あとがき」に書かれている、その官邸前抗議行動での著者の行動からも、いかにも古い活動家だなぁという印象が…。こういう人のパワーをどうやって有益無害に活かしていくか。
読了日:12月11日 著者:広瀬 隆
原発大国フランスからの警告 (ワニブックスPLUS新書)原発大国フランスからの警告 (ワニブックスPLUS新書)感想
電力の75%を原発に依存するフランスが、福島第一原発の事故に大きな衝撃を受けながらも、なお原発維持の姿勢を崩さない理由が、この本を読むと分かる。そして、その条件のすべてが日本には適用できない、ということも。好著だが、あえて注文を付けるなら、日本語の地の文はまともなのに、フランスの原子力関係者の発言など、フランス語から日本語への翻訳があまりよろしくない。
読了日:12月7日 著者:山口 昌子
東京をどうするか――福祉と環境の都市構想東京をどうするか――福祉と環境の都市構想感想
前回の都知事選の前に読もうと思って買ったのに手を着けられていなかったのだが、今回読んでも得るところの多い本。ただし、生真面目な論文集で、一般の読者を想定しているとは言いがたい。研究者・学生・政策担当者向けか。読んで良かったとは思うけど、どこまで自分の中で咀嚼・消化できているか、と言われると厳しいなぁ。
読了日:12月4日 著者:
サイクリング・ブルースサイクリング・ブルース感想
確かに旅に出たくなる。
読了日:11月27日 著者:忌野 清志郎
日本人の9割に英語はいらない日本人の9割に英語はいらない感想
最終的な主張のほとんどには賛同できるのだが、そこに至る論旨が乱暴すぎる。表題の「9割」を導き出す計算(統計データに基づいていると著者は主張するが)もいいかげん。短時間で読めるけど、あまり読む意味はないかも。
読了日:11月25日 著者:成毛眞
原発から見えたこの国のかたち (-)原発から見えたこの国のかたち (-)感想
「いま読むと少し感情的に過ぎる気もするなぁ」と思いつつ読んでいたのだけど、途中で気がついた。自分が鈍感になっているのだ、と。
読了日:11月14日 著者:鈴木 耕
独裁体制から民主主義へ: 権力に対抗するための教科書 (ちくま学芸文庫)独裁体制から民主主義へ: 権力に対抗するための教科書 (ちくま学芸文庫)感想
形式的には民主的な制度が整っている日本でこの本に書かれている知見を活かしていくには相当の応用力が必要になるとは思うが、それでもいろいろ得るところの多い本。図書館で借りたのでさらっと読んだだけだが、これは手元に置いておく価値があるかも。
読了日:11月12日 著者:ジーン シャープ
人間そっくり (新潮文庫)人間そっくり (新潮文庫)感想
虚構の劇団「イントレランスの祭」を観て、ふとこれを連想したのだけど、読んでみたらあまり関係なかった(関連しているかなというフレーズが少しだけあったくらい)。しかし、ずーっと一室で展開される対話はすごく演劇的。春先に安部公房の作品を続けて読んでいたせいか、この文章をすらすらっと読めてしまう自分が怖い(笑)
読了日:11月5日 著者:安部 公房
脱原発とデモ: そして、民主主義脱原発とデモ: そして、民主主義感想
初心忘るべからず。
読了日:10月30日 著者:瀬戸内 寂聴,鎌田 慧,飯田 哲也,宮台 真司,いとう せいこう,小熊 英二,毛利 嘉孝,鶴見 済,稲葉 剛,松本 哉,山本 太郎,雨宮 処凛,柄谷 行人,山下 陽光,二木 信,中村 瑠南,原発いらない福島の女たち,落合 恵子,小出 裕章,平井 玄
レヴィナスと愛の現象学 (文春文庫)レヴィナスと愛の現象学 (文春文庫)感想
読み進むにつれて難解な話になっていくし、こちらの理解度もそれに合わせて落ちて行っているはずなのだが、なぜか読む勢いは増していくという不思議な本。
読了日:10月30日 著者:内田 樹
夏への扉[新訳版]夏への扉[新訳版]感想
超有名作品なのに実は未読だった。ねこ大活躍。なーう。内容については、タイムトラベルのパラドックス解消についての部分にちょっと強引な感じはあるが、まぁ許容範囲かな。「どこかで会ったことがあるとよく言われる」の伏線が面白い。
読了日:10月21日 著者:ロバート・A・ハインライン
政治学 (ヒューマニティーズ)政治学 (ヒューマニティーズ)感想
100頁ちょっと、パンフレットと言ってもいいほどの規模だが、内容は濃い。滋味溢れる、という感じ。体系的な構成ではないが、周囲からじわじわと包み込むように寄せていくうちに「政治」の輪郭が浮かび上がる。「偽善」の考察は素敵。この本を読んですぐにどうこうということはないだろうけど、折に触れて繰り返し読みたい本。
読了日:10月18日 著者:苅部 直
「ネットの自由」vs.著作権: TPPは、終わりの始まりなのか (光文社新書)「ネットの自由」vs.著作権: TPPは、終わりの始まりなのか (光文社新書)感想
著者自身も認めているように、これという正解にたどり着けない、敢えて言うなら歯がゆい本。しかし著者の根っこにあるのは、「『主人から正解を与えられる奴隷』でいるくらいなら、間違える自由市民でいるべきです」(172頁)という明朗快活な民主主義への信念と、著作権をめぐる問題においては「(権利者か利用者という立場ではなく)いつでも『文化の側』に立ちたいと思っています」(192頁)という宣言である。学生時代に芝居仲間として少しばかり付き合いのあった人がこういう姿勢でいるというのはとても嬉しい。
読了日:10月16日 著者:福井 健策
自転車ぎこぎこ自転車ぎこぎこ感想
就寝前に少しずつ読み進めて読了。前作同様、愉快な文体。
読了日:10月14日 著者:伊藤 礼
巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))感想
時空をあっさり飛び越えちゃうスケールの大きさと平行して、地球上のちまちました政治闘争が絡むのが面白い。構図として陰謀論になってしまっている点など、突っ込みどころはいろいろあるのだけど、それを補って余りある傑作だと思う。
読了日:10月13日 著者:ジェイムズ・P・ホーガン
ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)感想
続編。やや詰め込みすぎの感がある。それにしても三作通じての本筋と離れた感想にはなるが、時空を超えた卓抜な想像力の一方で、もっと身近で日常的な部分については変化を想定していないところが、逆に興味深い。たとえば、欧州は統合が進んでいる様子が窺われるがソ連は相変わらずソ連だとか、公共の場でタバコを吸う習慣がそのまま残っていたりとか。
読了日:10月11日 著者:ジェイムズ・P・ホーガン
星を継ぐもの (創元SF文庫)星を継ぐもの (創元SF文庫)感想
ずいぶん前(10年以上?)に読んだのだが、家人に勧めた関係で再読。けっこうよく覚えていた。当時は気づかなかった作品中の矛盾(科学的に誤っているというだけの意味ではなくて、この作品のなかの設定としても矛盾している)に一点気づいてしまったというのは、読者としての進歩なのだろうか?(笑) とはいえ傑作であることには変わりないので、これまた既読の続編・続々篇へ。それにしても、この「読者メーター」だけ見ても、この作品が盛んに読み継がれていることが分かって、なんだか嬉しく、楽しい。
読了日:10月8日 著者:ジェイムズ・P・ホーガン
街場の読書論街場の読書論感想
ウチダ先生からたくさんの「パス」を受けた感じ。もちろん過去に読んだことのある文章も多いのだけど、それでも捌ききれない(笑)
読了日:10月4日 著者:内田樹
二年間の休暇(下) (岩波少年文庫)二年間の休暇(下) (岩波少年文庫)感想
あっというまに読了。小学生の頃に読んでいた本をこうして読み返せるというのはいいものだな。後半の後半の展開はちょっと急ぎすぎのような気がしてあっけなかった。やはり島での生活を何とか構築していく部分がいちばん面白いのかもしれない。
読了日:9月25日 著者:ジュール・ヴェルヌ
二年間の休暇(上) (岩波少年文庫)二年間の休暇(上) (岩波少年文庫)感想
子どもの頃、何度か繰り返して読んだ本。さすがに、印象的な場面はいくつかはっきり覚えている。ところが、最終的にどのような展開になるのかはまったく覚えていない。読み進めていくうちに思い出すかな。下巻も楽しみ。
読了日:9月24日 著者:ジュール・ヴェルヌ
エディー・ジョーンズの監督学 日本ラグビー再建を託される理由エディー・ジョーンズの監督学 日本ラグビー再建を託される理由感想
エディさん自身、あるいはエディ・ジャパンや彼が指揮したサンゴリアスについてというだけでなく、何というか、現代ラグビーのトレンドの推移についても知見が深められる本。冒頭いきなりの誤字に凹むなかれ。
読了日:9月23日 著者:大友 信彦
ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)感想
これはよい本。最近の、そしてより話題になっている『ネットと愛国』も面白かったが、痛切さという点ではこちらの方が上回る。性急な「悪者」糾弾ではなく、「こうすべきだ」という簡単な答えも提示しない。読者に考えることを迫る優れたルポルタージュだと思う。中国人研修・実習生とブラジル日系人労働者という二つの切り口が、好対照でありつつ、最後に微妙に絡んでくるという構成が巧みだ。
読了日:9月21日 著者:安田 浩一
白鯨 下 (岩波文庫 赤 308-3)白鯨 下 (岩波文庫 赤 308-3)感想
うむ、名作(好き嫌いはかなり別れそうだけど)。白鯨との最初の遭遇での描写、その静謐さが本作のクライマックスという気がする。映画化するなら(されているだろうけど)、この場面は台詞も音楽もなく、ただ波と風と、ボートの軋みと、それだけで数分間引っ張りたい。むちゃくちゃ緊張感高まると思う。
読了日:9月19日 著者:ハーマン・メルヴィル
白鯨 中 (岩波文庫)白鯨 中 (岩波文庫)感想
違う文体で挿入される「別の船のエピソード」がけっこう面白い。しかしその一方で本筋(?)の航海はいよいよ佳境へ……。さて下巻だ。
読了日:9月13日 著者:ハーマン・メルヴィル
白鯨 上 (岩波文庫)白鯨 上 (岩波文庫)感想
「夏休みの読書」はコレ。訳文に、格調高い文章にしたいという「力み」が少しばかり感じられるが、面白い。引き続き中巻へ。
読了日:9月10日 著者:ハーマン・メルヴィル
将棋の子 (講談社文庫)将棋の子 (講談社文庫)感想
エッセイ、ドキュメンタリー、小説のどれとも言いかねる作品。やや感情に酔っていると思わせる部分もあって、読んでいてちょっと辟易することもあるが、それだけに、と言うべきか、気持ちはよく伝わってくる。この作品のいわば「結論」は、とてもよい。
読了日:9月8日 著者:大崎 善生
論語なう ~140文字でわかる孔子の教え~ (マイナビ新書)論語なう ~140文字でわかる孔子の教え~ (マイナビ新書)感想
論語は、前に注釈書(たぶん講談社学術文庫の宇野哲人『論語新釈』)を通読したのだけど、これもずいぶん前の話なので、なかなか新鮮な印象で読めた。苦労人としての、生身の人間としての孔子を紹介する部分も面白かったが、ひとまず、最初の定番フレーズのところだけ立ち読みしてもいいかもしれない。「なう」文体がどうか、という賛否はあろうが、まぁこれも「あり」だと私は思う。
読了日:8月29日 著者:牧野 武文
銀輪の巨人銀輪の巨人感想
趣味として自転車関係の本はいろいろ読んでいるし、翻訳屋という立場からは「低価格競争に巻き込まれず高付加価値の商品で利益率を上げる」みたいなビジネス戦略は珍しくもないのだけど、その両者がこうも見事に融合する分野があったとは。日本の自転車市場は規模がでかいだけに惰性が大きすぎて、低速ママチャリの歩道走行中心という文化はなかなか代わっていかないだろうなという気がする。この惰性の大きさというのは自転車市場/文化に限った話ではないけど。
読了日:8月27日 著者:野嶋 剛
戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)感想
面白かった。日本の戦後政治を対米従属/自主路線の二項対立で読み解いていく本。日本政治のさまざまな動きの裏に「米国の圧力」を見ていく態度は一見すると陰謀論のようだが、米国側の視点から「戦後の対日政策の推移」と捉えてみれば、十分に合理的だし、「揺れ」「ぶれ」が見られるところに現実味が感じられる。この著者の本は他に3冊読んでいるが(新書ばかりだが)、それらの著作では文章の拙さが目についたが、この本に限っては力の入れ方が違うのか、ほとんど気にならなかった。……というわけで本書はお勧めではあるが、
読了日:8月22日 著者:孫崎 享
脱原発を決めたドイツの挑戦  角川SSC新書  再生可能エネルギー大国への道脱原発を決めたドイツの挑戦 角川SSC新書 再生可能エネルギー大国への道感想
これは良書。脱原発・脱炭素・再生可能エネルギーへの転換がいかに困難か、そしていかに消費者・産業界にとって大きなコスト負担になるかを丁寧に説明している。もちろん、主眼は(そして私自身の関心も)「なぜ『それでもなお』なのか」という部分にあるのだが。
読了日:8月20日 著者:熊谷 徹
ドイツは脱原発を選んだ (岩波ブックレット)ドイツは脱原発を選んだ (岩波ブックレット)感想
本文は悪くないが、確かに解説は今ひとつだった。しかし本文は悪くないとは言っても、これを読むなら、熊谷徹が書いた新書を読む方がいいような気がする。
読了日:8月19日 著者:ミランダ・A・シュラーズ
日本人の心のゆくえ日本人の心のゆくえ感想
出版からやや日が経っているので、扱われているのは阪神淡路大震災やオウム真理教事件といったあたりだが、それでも十分に現実感を伴って読ませる内容。歯切れの悪さは、むしろこの本の美点だと思う。
読了日:8月18日 著者:河合 隼雄
それでも、日本人は「戦争」を選んだそれでも、日本人は「戦争」を選んだ感想
「ああそうか、だから日本人は戦争を選んだのね」という単純な答えが得られる本ではない。「ああ、この時点でこうしていればよかったのか」ということも分からない。むしろ歴史というのはそう単純なものではない、ということを教えられる本。
読了日:8月8日 著者:加藤 陽子
ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語 (Zoran Zivkovic's Impossible Stories)ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語 (Zoran Zivkovic's Impossible Stories)感想
「スゴ本」ブログで興味を惹かれたのだけど、期待したほどではなかった。安部公房「笑う月」の方が現実が揺らぐ感じが強い。
読了日:8月1日 著者:ゾラン・ジフコヴィッチ
質量はどのように生まれるのか―素粒子物理最大のミステリーに迫る (ブルーバックス)質量はどのように生まれるのか―素粒子物理最大のミステリーに迫る (ブルーバックス)感想
ブルーバックスの常だが、最初は面白く読み始めても、途中からちんぷんかんぷんになる。それでも最後まで興味深く読めた。何とか読ませようとする著者の力量は相当なのだと思う。そもそもこのジャンルがすんなり頭に入ってくることなんてありえないのだし(笑) 何というか、自分にはついて行けない世界なのだけど、人間の頭脳がこれだけのことを考えられるという、そのこと自体に感動を覚える。
読了日:8月1日 著者:橋本 省二
不愉快な現実  中国の大国化、米国の戦略転換 (講談社現代新書)不愉快な現実 中国の大国化、米国の戦略転換 (講談社現代新書)感想
果たしていつ頃の日本人であれば(といっても現代的な意味での「日本人」が誕生したのはたかだかここ150年くらいだと思うが)、「日本は世界においてたいして重要な国ではない」という認識を素直に受け入れられたのだろう、という気がする。そのような諦観のもとで、いかに幸福に暮らし、近隣諸国と仲良くやっていくか、が問われている……そう思わせる本。直前に読んだ『日本の国境問題』よりも文章が整っていて読みやすい印象を受けた(それでもところどころ気になる点はあるが)。
読了日:7月25日 著者:孫崎 享
日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)感想
有益と思われる情報は多いし、全体としての論調は納得できるものなのだが、残念ながら文章が…。校正者・編集者の責任か。日々の職場での同僚の嘆きから察するに、官僚出身だとこういう文章を書くようになるのかなぁ。
読了日:7月18日 著者:孫崎 享
毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる! 月間たった80㎞で2時間46分! 超効率的トレーニング法 (ソフトバンク新書)毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる! 月間たった80㎞で2時間46分! 超効率的トレーニング法 (ソフトバンク新書)感想
「クロストレーニングかぁ。ランの距離は少なくていいと言っても、バイクで走る距離が半端じゃないんだろうなぁ」と思いつつ読み始めたのだが、提示されているトレーニングプランを見ると、むむ、これならけっこう現実的か? プランの対象が「目標サブ4」というのもまさに私向き。図書館で借りて読んだけど、自転車にも積極的に乗りたい自分としては、これは買ってもいいな。
読了日:7月13日 著者:吉岡 利貢
進化論の何が問題か―ドーキンスとグルードの論争進化論の何が問題か―ドーキンスとグルードの論争感想
グールドは『フルハウス』だけ、ドーキンスに至っては1冊も読んでいないのだけど、特に読みにくい感じがしなかったのは著者の力量か。それにしても、信頼できるライバルとの論争というのは素敵だ。
読了日:7月12日 著者:垂水 雄二
ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて (g2book)ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて (g2book)感想
苦い読後感の残る、しかし良書。「では、どうするのか」という、この先とりうる可能性については読者の思索に委ねられている。
読了日:7月10日 著者:安田 浩一
日本語と外国語 (岩波新書)日本語と外国語 (岩波新書)
読了日:7月9日 著者:鈴木 孝夫
日本は再生可能エネルギー大国になりうるか (ディスカヴァーサイエンス) (DISCOVER SCIENCE)日本は再生可能エネルギー大国になりうるか (ディスカヴァーサイエンス) (DISCOVER SCIENCE)感想
前半は表題に反して(帯文には書いてあるが)福島第一原発事故の総括(著者は民間事故調の座長)。しかし、この部分がよくまとまっていて良い。後半は本題に入る。電気をやたらに使う生活(文化と言ってもいいか)に対する問い直しが欠落しているけど、そういう哲学的な本ではないので、これは無い物ねだりか。再生可能エネルギーに切り替えつつも、現状どおりの「豊かな生活」は可能であると読める。その意味で、広く賛同を集めやすいと言えるかもしれない。
読了日:7月4日 著者:北澤 宏一
自転車依存症自転車依存症感想
面白かったけど、ランドナー志向は自分にはないなぁ。
読了日:7月2日 著者:白鳥 和也
日本語の古典 (岩波新書)日本語の古典 (岩波新書)感想
特に古代~中世については高校時代の古文の授業や大学受験の過程で接した作品も多い。当時も古典は好きだし得意ではあったのだが、あの頃にこの本を読んでいたら、ますます楽しめただろうと思う。中学生・高校生に読んで欲しい本。R指定的な要素もあるにはあるが、そういうのを読んでこそ(笑)
読了日:6月27日 著者:山口 仲美
人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか (中公新書)人種とスポーツ – 黒人は本当に「速く」「強い」のか (中公新書)感想
面白かった。「『黒人』(アスリート)は先天的に速く、強い」という言説の検証。その言説そのものがどのような歴史的・社会的な文脈のなかで生成されてきたかという検証はもちろん面白いのだが、そもそも「黒人」(ひいては人種)というカテゴリーそのものが歴史的・社会的な産物である、という。アフリカ人とユーラシア人(欧州・アジア)の遺伝的差異よりアフリカ人内部での遺伝的差異の方が大きいという話はもう少し突っ込んで読みたいかも。
読了日:6月22日 著者:川島 浩平
共同研究 転向1 (東洋文庫)共同研究 転向1 (東洋文庫)感想
読み終わるのに時間がかかったが、実に面白かった。読んでいて常に持っていたのは、「いつか自分も歩むかもしれない道」という問題意識。いや~、拷問とか示唆されただけでも転向してしまいそうな臆病者なので…。それにしても、日本の近代史において最大の転向者は、共産主義者→ファシストの面々ではなくて、昭和天皇(神→人)なのだなぁ。さて、続巻に進むかな。
読了日:6月19日 著者:
仲間を信じて――ラグビーが教えてくれたもの (岩波ジュニア新書)仲間を信じて――ラグビーが教えてくれたもの (岩波ジュニア新書)感想
岩波ジュニア新書というのは、いちおう小学校高学年~中学生くらいを対象としているはずだが、たいていの場合、大人が読むに堪えるレベルの内容になっていると思う。「そのジャンルに詳しくない大人向けの入門書」として優れている、というべきか。この本も、ラグビーにちょっと関心はあるけどよく知らないという大人に読んでほしい本。
読了日:6月8日 著者:村上 晃一
テクテクノロジー革命―非電化とスロービジネスが未来をひらく (ゆっくりノートブック)テクテクノロジー革命―非電化とスロービジネスが未来をひらく (ゆっくりノートブック)感想
「『正しさ』をベースにしてやっていくことの怖さ」(引用は不正確)という言い方が印象に残った。まぁ何というかインターネットとかクラウドとか原発とか(と敢えて並べて書いてみるけど・笑)、そういうテクノロジーに比べて夢と楽しさに溢れているように思える。
読了日:6月6日 著者:藤村 靖之,辻 信一
新装版 聖職の碑 (講談社文庫)新装版 聖職の碑 (講談社文庫)感想
先日の遭難事件を機に読んでみた。悲惨な事件ではあるのだが、なぜか同じルートで登ってみたいという気にさせられるのが不思議。ところで、この作品について大きな疑問がある。登りはじめの頃にすれ違う3人の下山者。彼らが山小屋の状態について正確な情報を伝えていれば(明らかに隠している)、かなりの確率でこの登山は中止されていたのではないか。そして、以降の部分で、これについて一言も触れられていないのはなぜなのか。
読了日:6月2日 著者:新田 次郎
安部公房の都市安部公房の都市感想
良い本なのだが、作品の選択を欲張りすぎたかなぁという気もする。一つ一つの作品の比重がちょっと軽くなってしまったような。いずれにせよ、この本で取り上げられている作品をあらかじめすべて読んでおいたのは正解だった。
読了日:5月30日 著者:苅部 直
絶望の国の幸福な若者たち絶望の国の幸福な若者たち感想
序盤の従来の「若者論」通史から始まって、さまざまな事象の解析の手際が優れており、とても情報量の多い、示唆に富む本。とはいえ、著者自身も認めているように「自分語り」であり、恐らくそれゆえの「生温さ(なまぬるさ)」がつきまとっている気がする。面白いのに読後感が今ひとつ、という本。
読了日:5月24日 著者:古市 憲寿
「悪」と戦う「悪」と戦う感想
著者の作品は、たぶん、ごく初期の『ジョン・レノン対火星人』『さようなら、ギャングたち』以来だと思う。当時と違ってずいぶん読みやすい印象だが、当然のことながらたぶん一貫している要素はあるはずではないか、と思うと昔の作品も読み返したくなる。本作は、読んでいると、なんだかTwitterでフォローしている著者の日常とかぶる印象。
読了日:5月18日 著者:高橋 源一郎
暇と退屈の倫理学暇と退屈の倫理学感想
タイトルの意味は、結論に至れば分かる。この本は「暇と退屈」についてのみ語っているのではなく、「倫理(学)」、あるいは思索そのものはいかにして可能になるかということを語っているような気がする。「とらわれ」でも「決断」でもなく、「開かれていること」。ただしその面では出発点を提示したに過ぎないので、やや物足りない。著者の次作でそのあたりが本書と同じくらいの柔らかさで展開されるとありがたいのだけど。 それにしても、表紙の「自分らしく、自分だけの生き方のルールを見つけること」というコピーにはけっこう違和感があるの
読了日:5月16日 著者:國分 功一郎
それでも、読書をやめない理由それでも、読書をやめない理由感想
以前読んだ『ネット・バカ』と似たような趣旨で、実際に同書からの引用も多い。内容的には『ネット・バカ』の方が得るものが多いと思われるので、敢えてこちらを読む必要はないかもしれない。ただ、本書の方が執筆が新しく、Facebookでの『グレート・ギャツビー』談義の部分などには興味を惹かれる。あと、人によっては、理屈っぽい『ネット・バカ』よりも本書の方が詩的でよいかもしれない。
読了日:5月10日 著者:デヴィッド・L. ユーリン
語るに足る、ささやかな人生 (小学館文庫)語るに足る、ささやかな人生 (小学館文庫)感想
語るに足る、ささやかな佳品。「アメリカ」「スモールタウン」がキーワードではあるけど、そういう背景を超えて、心に留めたい文章がいくつかあった。
読了日:5月7日 著者:駒沢 敏器
砂の女 (新潮文庫)砂の女 (新潮文庫)感想
これまで読んだ安部公房作品のなかで、ラストでいちばん感動というか、じわっと来た作品。もちろん他の作品同様、現実と非現実の境目が曖昧だったり、不条理な部分はあるのだけど、何となく最後に(ハッピーエンドとは呼べないにせよ)落ち着くべきところに話が収斂していったようだ。
読了日:4月30日 著者:安部 公房
ロードバイクQ&A 今さらきけないソボクな疑問ロードバイクQ&A 今さらきけないソボクな疑問感想
「やまめの学校」など、一般的に言われている話からは逸脱する部分もあるようだが、オーソドックスな路線にもきちんと目配りしつつ話を進めているところが誠実だと思う。『栗村修の気楽に始める…』とテイストは違うが(本書の方が情報量は豊かである)、どちらも好著。
読了日:4月28日 著者:高千穂 遙
箱男 (新潮文庫)箱男 (新潮文庫)感想
かぶりたくなるね、これは。危険危険。
読了日:4月28日 著者:安部 公房
栗村修の気楽にはじめるスポーツバイクライフ栗村修の気楽にはじめるスポーツバイクライフ感想
#jspocycle J Sportsのサイクルロードレース中継の解説をしている著者に親しみを感じる人は是非読むべきだと思う。初心者がロードバイクに関する情報を得るというだけの目的なら、別にこの本でなくてもいいと思うが、著者のキャラクターが随所に表れていて(それが有益だとは言わないが)楽しく読める。
読了日:4月25日 著者:栗村 修
動員の革命 - ソーシャルメディアは何を変えたのか (中公新書ラクレ)動員の革命 – ソーシャルメディアは何を変えたのか (中公新書ラクレ)感想
ソーシャルメディアの特性を過不足なくまとめていると思う。本書には出てこないが、効力感(または有能感、self-efficacy, sense of efficacy)という言葉を思い浮かべた。ソーシャルメディアが市井に生きる人間の、そういう感覚・意識を(空虚でない形で)高めると良いだろうなと思う。その一方で、本書を読んでいて一貫して抱き続けてきた違和感のようなものはあるのだが、それは今の社会に対する違和感であって、本書や著者だけに帰すべき責任ではないのだろうと思う。
読了日:4月24日 著者:津田 大介
君のいない食卓君のいない食卓
読了日:4月23日 著者:川本 三郎
復活の日 (ハルキ文庫)復活の日 (ハルキ文庫)感想
救世の英雄を登場させないところが作者の真骨頂か。「誰かがやらねばならず、誰もが指名を拒否しないならば、だれがとりたててえらばれたものの勇敢さをうたうだろう?」 ネタバレにはなるが、ある意味、この小説ではすべてが失敗するのだ。災厄の張本人でさえ、そのことを自覚していないし、その身が守られているわけではない。
読了日:4月20日 著者:小松 左京
安部公房全作品〈3〉 (1972年)安部公房全作品〈3〉 (1972年)感想
『飢餓同盟』『けものたちは故郷をめざす』『R62号の発明』収録。小説のタイプは実に多様だが、現実/非現実が揺らぐ感覚は共通しているように思う。
読了日:4月17日 著者:安部 公房
スプーンと元素周期表: 「最も簡潔な人類史」への手引きスプーンと元素周期表: 「最も簡潔な人類史」への手引き感想
良い意味で人間味あふれる化学史/科学史になっているので、元素名索引だけでなく人名索引も付けてほしかった。しかしこの本、ボリュームたっぷりで消化しきれないかも……。
読了日:4月13日 著者:サム キーン
第四間氷期 (新潮文庫)第四間氷期 (新潮文庫)感想
確か中学1年のときに「SFの名作」という位置づけで読んだはず。当時、何を理解していたのかなぁ。安定していると思い込んでいた日常が揺らぐ感覚は、SF的な設定ゆえに他の作品よりも鮮明に感じられる。それにしてももう一人の「私」はその後どうなったんだろう……。そういえば、冒頭がいきなり大津波の予兆で、ちょっとびびりました。
読了日:4月3日 著者:安部 公房
期間限定の思想  「おじさん」的思考2 (角川文庫)期間限定の思想 「おじさん」的思考2 (角川文庫)感想
これまた文庫版を買ったのを機に再読。単行本版のあとがき(文庫版にはこちらももちろん収録されている)には「この本は期間限定であって賞味期限は数年」とあり、文庫版のあとがきには「コンテンツの賞味期限が切れてもリーダブルである書物の条件とは何か」ということが書かれていて、時間の経緯が感じられて興味深い。もちろん、この本は「賞味期限が切れてもリーダブル」であると思う。第一部の「女子大生との会話」仕立てはちょっとわざとらしい感じがあって、あまり気に入らないのだけど。
読了日:3月31日 著者:内田 樹
榎本武揚 (中公文庫)榎本武揚 (中公文庫)感想
いちおう歴史小説ではあるのだけど、安部公房らしいわけのわからなさ。問いかけは茫漠と宙に浮き、答えはもちろん得られない。それが物足りないと感じるか心地よいと感じるかは読み手次第だろう。苅部直『安部公房の都市』を購入したのをキッカケに、同書を読む前に、そこで取り上げられている作品を読んでおこうと続けさまに安部公房の作品を読んでいるのだけど、しかしこの作品は「都市」という切り口とはさほど縁がなさそうにも思うのだが、どう扱われているのか今から興味深い。いちおう維新期の江戸は出てくるけど…。
読了日:3月30日 著者:安部 公房
未来への提言―福島みずほ対談集未来への提言―福島みずほ対談集感想
対談相手の一人がウチダ先生なので読んでみたが、その部分については彼のいつもの話なので新鮮味はなし。社民党の党機関誌に掲載されたものなので、党のプロパガンダという雰囲気はもちろんあるのだけど、それはさておき結構面白かった。この本自体は昨年秋の出版だが、確か最初の二編を除いて震災前の対談。鎌仲ひとみさんとの対談で、福島みずほが「別に原発を今すぐ全部止めろとは言いません」という趣旨の発言をしていて、「おお、この頃はまだ社民党でさえ切迫感がなかったんだなぁ」となんだか感慨深い(?)。
読了日:3月26日 著者:福島 みずほ
犠牲のシステム 福島・沖縄 (集英社新書)犠牲のシステム 福島・沖縄 (集英社新書)感想
両方とも関心の高いテーマなのであっというまに読めた。「天罰/天恵論」の考察はちょっと脱線かなと思いつつ読み進めたのだけど、きちんと収束していくところが興味深い。原発の「四つの被害」、事故の責任の冷静な区分、後半の在沖米軍基地の問題とも絡めて、民主主義がはらむ危険など非常に参考になる部分が多い。
読了日:3月21日 著者:高橋 哲哉
燃えつきた地図 (新潮文庫)燃えつきた地図 (新潮文庫)感想
謎が解明されていくのではなく、どんどん深まっていくハードボイルドといった趣。読者もこの世界から戻ってこられない。
読了日:3月17日 著者:安部 公房
笑う月 (新潮文庫)笑う月 (新潮文庫)感想
安部公房は子どもの頃に「SF」という位置づけで『第四間氷期』『人間そっくり』あたりを読んで以来。この短編集は、食事どきや寝る前に読むには不向きだが、特に冒頭の『睡眠導入術』や『空飛ぶ男』など、夢と現実の境目が分からない作品はとても良い(というか怖い) 続いて『燃えつきた地図』に移りつつ、苅部直『安部公房の都市』を少しずつ読み進めようかと思う。
読了日:3月13日 著者:安部 公房
「おじさん」的思考 (角川文庫)「おじさん」的思考 (角川文庫)感想
文庫版を新たに入手したので、就寝前に少しずつ再読。単行本の方が出版されたのは10年前だが、内容はほとんど古びていないような気がする。もちろん、著者の主張は本書から少しずつ変化してきてはいるのだろうけど。出家の勧めが良かったなぁ。むろん、漱石論も。
読了日:3月13日 著者:内田 樹
図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)感想
「気温のしくみ」くらいまではすらすらと分かったが、「風のしくみ」から低気圧・高気圧などの話になるに従って難解に。気圧傾度力・コリオリ力・摩擦力のベクトル合成のあたりで躓いたのが原因か。それにしても、ミクロな分子規模の話からマクロな地球規模の話まで、視点がダイナミックに動くのがこの分野ならではという感じ。
読了日:3月10日 著者:古川 武彦,大木 勇人
自由貿易は、民主主義を滅ぼす自由貿易は、民主主義を滅ぼす感想
あまり話題に上らなくなってしまったTPPだが、「○○の弊害があるからTPP反対」というのも大事だけど、「今の局面では保護主義の方が優る」という論点は建設的でよいと思う(いわゆる「対案」ね・笑)。理由は本書などを読めば分かる。「協調的保護主義」という発想は新鮮だった(「互恵的」と呼ぶ方がより適切だろうか)。トッドの著書は『帝国以後』しか読んでいないが、他も読んでもいいかもしれないと感じた。
読了日:3月3日 著者:エマニュエル・トッド
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)感想
下巻も無事に読了。さすがに同じことの繰り返しもあるので少しダレたけど、見方を変えれば、それだけ一貫性があるということで。パプアニューギニアとかアフリカの話になるとさすがに地理的な知識も乏しいので、Google Mapなど見ながら読むといいかもしれない。視点のズームイン/アウトにも追従できるし。その意味ではこれも電子書籍としてタブレット端末で読むのに向いている本かもしれないなぁ。
読了日:2月29日 著者:ジャレド・ダイアモンド
銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎感想
これは面白いね。びっくりするようなことは特に書いてないんだけど、なるほどと納得する。そして、著者の分析に仮に間違いがあったとして(まぁあるんだろうけど)、しかしこれを鵜呑みにするとしても、それほど不都合な行動はもたらされないだろうという気がする。引き続き下巻へ。
読了日:2月23日 著者:ジャレド ダイアモンド
俺に似たひと俺に似たひと感想
著者もあとがきで軽く示唆しているように、もっと辛く長い介護の例はいくらでもあるだろう。この作品で語られているのは、たぶん客観的に見れば平凡な老衰による死に至る、比較的恵まれた状況での介護である。しかし、だからこそ、心に染みる物語になっているような気がする。ウェブでの連載はすべて読んでいたのだけど、小田嶋隆による帯文「ぜひとも通しで読みたいです。紙で。なぜだろう」に共感する。そして、著者自身も大いに気に入っているようだが、挿画がすばらしい。挿画で泣ける本は珍しいのではないか。
読了日:2月15日 著者:平川 克美
The Age of Diminished ExpectationsThe Age of Diminished Expectations感想
最初に邦訳を買って長年放置。ふと思い立って文庫版を図書館で借りて読み始めたのだけど訳がひどいので、これまた前に購入して放置してあった原書を読んだ。読みやすく明快なのだけど、さすがに古い感じがする。この本が書かれてから何が起きたかと言えば、経済中心に見ても、ユーロ誕生、9.11、アフガニスタン/イラク侵略、中国の台頭、リーマンショック……。このあたりを踏まえた続編が読みたい気がする。まぁ今も健筆をふるっている著者なのだから、いくらでも新しい著作はあるのだろうけど。
読了日:2月15日 著者:Paul Krugman
コザック ハジ・ムラートコザック ハジ・ムラート感想
この作品がトルストイの文学のなかでどういう位置づけにあるかなんてことは実のところそれほど重要ではなくて、何となく、靴の下で枯れ枝がぱきぱき折れる音が耳に残っているような気がする、というのが重要なのだ(いや、そんな場面があったかどうかさえ定かではないけど、何となくそういうイメージで)。それにしても、日常の些細な情景から、物語全体が想起される『ハジ・ムラート』の構成はかっこいいよな……。
読了日:2月13日 著者:辻原登
地下鉄のギタリスト―Busking in London地下鉄のギタリスト―Busking in London感想
ロンドンの地下鉄でbusker(街頭ミュージシャン)として活躍している日本人ギタリストの日常。今日はどこの駅で演奏し何ポンド稼いだか、そしてどんな出来事があり、何を思ったのか。それぞれのエピソードに筆者が「BGM」を指定しているのが面白い(必ずしもその日に筆者が演奏した曲とは限らない)。音楽(特にロック/ポップス)が好きな人なら読んで損はない本だし、それほど音楽に関心のない人にとっても、かの地の文化や雰囲気がしみじみと伝わってくる好著だと思う。
読了日:2月6日 著者:土門 秀明
困ってるひと困ってるひと感想
内容の大切さという点はもちろんあるのだけど、それ以前に(といっていいのか?)、たいへん頭のいい、しかも文章の上手い著者なのだ。文体は今どきの若者なのかもしれないけど、それほど抵抗なく読めるのは、バックボーンとして著者がしっかりした文章をたくさん読んでいることが窺えるからかもしれない(もちろん私はフランス文学出身者に点が甘い)。「共感する」にはあまりにもエクストリームな境遇だし(←影響が…)、「同情する」ことを著者が求めているわけでもない(たぶん)。でも私は読者としてこの本に「反応する」。
読了日:2月1日 著者:大野 更紗
小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ感想
著者の本はすべて読んでいるファンとしてこんなこと書きたくはないのだが、ちょっと期待外れ。内容としてはいちいち頷くことばかりだし、こういう本がよく売れているというのはとてもいいことだと思うのだが、なんだか、とても読みやすいのだけど「ゆるい」感じがしてしまう。ふだんはもっと骨太さと切れ味の両立した文章を書く人であるように思う。これまでとは違う「ですます」調の文体が、(少なくとも私という読者に対しては)むしろマイナスに作用してしまったか。いや、いい本なんですよ、すごく。でも物足りないな~。
読了日:1月28日 著者:平川克美
ベストセラー炎上ベストセラー炎上感想
6点の本/著者が取上げられているのだけど、私はベストセラーだからといって本を手に取るタイプではないので、自分が読んだことのある本2点のみ(村上春樹『1Q84』、内田樹『街場のメディア論』)の部分だけ読んだ。「飛ばし読みだからよく分らないけど」(西部)というスタンスで批評(?)している。その点に、この本のすべてが言い尽くされている。この本で批判されているということは、逆に、他の4点も良書ということなのかもしれない。
読了日:1月28日 著者:西部 邁,佐高 信
はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)感想
中盤まで(読んだ人にはどの時点までかすぐ分かるでしょう)かなり引き込まれて読んだけど、その後ちょっとダレた感じでペースが落ちた……。良い本だとは思うのだけど、いろいろ詰め込みすぎて散漫になった印象があるなぁ……。
読了日:1月22日 著者:ミヒャエル・エンデ
反哲学入門 (新潮文庫)反哲学入門 (新潮文庫)感想
哲学史の入門としてはよくまとまっていると思う。ただ、特に理性主義に対する反発の部分は、やや感情的というか、日本の哲学会に対する私怨のようなものがあるのではないかと感じてしまう。まぁそれも、名物教授の雑談混じりの講義を聴いているようで良い味とも思えるが。著者はニーチェ以降をそれまでの哲学と一括りにして哲学史のなかに位置づけることに否定的だが、「存在」をどのようなものと捉えるにせよ、「言葉」を介して「存在」を思索するという限りにおいて、(続く)
読了日:1月18日 著者:木田 元
最終講義-生き延びるための六講 (生きる技術!叢書)最終講義-生き延びるための六講 (生きる技術!叢書)感想
表題作(?)でもある「最終講義」は、雑誌「文学界」掲載時にすでに読んでいたのだが、読み返しても感動的だった。あとは、やはり教育関係の講演が良い。ユダヤ学会での講演は、『私家版・ユダヤ文化論』にはけっこう感銘を受けた覚えがあるわりには、今ひとつピンとこなかった。
読了日:1月14日 著者:内田 樹
いちばんやさしいネットワークの本 (技評SE選書)いちばんやさしいネットワークの本 (技評SE選書)感想
このレベルの話ならだいたいは分っているので、主として「社内なんちゃってシステム管理者」の後継者養成に向けて「どう説明するか」を模索するために読んだが、それでも「あ、そうだったのか」と気づかされる点もあった(笑)(←このへんが「なんちゃって」の悲しさ)。先日読んだ『小悪魔女子大生の……』よりはるかに読みやすく、しかも情報量は多い。「おわりに」の「IT業界で働くエンジニアが幸せになったとき、本当の意味で、ITが人を幸せにする世界が実現すると信じています」という言明は、良い意味で文系出身者っぽくていいな。
読了日:1月12日 著者:五十嵐 順子
ゴーストタウン チェルノブイリを走る (集英社新書)ゴーストタウン チェルノブイリを走る (集英社新書)感想
人間がこれまでに生み出したもののうち、最も長く残るのはプルトニウムなのだ。残念ながら。
読了日:1月10日 著者:エレナ・ウラジーミロヴナ・フィラトワ
なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記 (岩波現代文庫)なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記 (岩波現代文庫)感想
もう少し癒やし系の本かと想像していたら、実にエキサイティングで知的刺激に富む本だった。もちろん、癒やしや感動の要素もあるのだけど。石原慎太郎は昨年の震災・津波について「天罰」発言をしたが、この本の著者はこう書く。「保険会社は地震やハリケーン、その他の自然の災害を『神の行為(Act of God )』と表現しています。(中略)私にとって、地震は『神の行為』ではありません。神の行為というのは、地震が去った後で生活を立て直そうとする人びとの勇気のことであり、被災者を助けるために自分にできることをしようと(続く)
読了日:1月8日 著者:H.S. クシュナー
民族とネイション―ナショナリズムという難問 (岩波新書)民族とネイション―ナショナリズムという難問 (岩波新書)感想
明快な結論や展望が提示されるでもなく、著者自身も認めているように雑駁な印象は拭えないけど、そのこと自体が、問題そのものが簡単にまとめられない性質であることを物語っている。問題に対する解答を与える本ではなく、問題がどこにあるのかを説明するような本。勉強になる。
読了日:1月3日 著者:塩川 伸明

2012年に読んだ本まとめ
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