加藤文元『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃』(KADOKAWA)

誰かが勧めていたのが気になって図書館で予約したのだけど、だいぶ待たされたので、情報源は忘れてしまった…。

「宇宙と宇宙をつなぐ」というタイトルだし、実際、主題であるIUT理論のIUはInter-Universalの略なのだが、「SFや理論物理に出てくるような並行宇宙(パラレルワールド)や多世界宇宙(マルチヴァース)とは関係ありません」(P25)ので、そういうものを期待する人は要注意。ただし、それに類した比喩を使っている部分もなくはない。

もちろんこの本を読んだからといって、IUT理論の内容が分かるわけがない。というか、その「中身」を示されて理解できる人は、数学者の中にだってそれほど多くはないようだし。しかし、IUT理論がどういう発想のもとで構築されたものかはよく伝わってくる。「よく伝わってくる」と思えるのは、これまでに啓蒙書オンリーではあるが、『素数の音楽』『フェルマーの最終定理』『シンメトリーの地図帳』あたりを、分からん分からんと思いつつ読んできた積み重ねがあるからかもしれないが。

惜しむらくは、「たし算とかけ算の一方をそのままにして、他方を少し変形する、あるいは伸び縮みさせ」(P175)た宇宙というのが、いったいどのようなものか、もう少し具体的に書かれていたら、と思う。もっとも、そのような宇宙は、それこそ普通の言葉では表現できないものなのかもしれないけど。

第6章「対称性通信」で詳しく語られる、モノ→情報(本書では「対称性」という性質)という流れを逆転させて、情報からモノを復元する、という発想からは、何だか昨今話題のmRNAワクチンについて、「情報だけ伝えて、ウイルス自体が感染する前に火星の基地でワクチンを用意しておく」なんて話があったのを連想してしまう…。

それにしても、理論物理にせよ数学にせよ、最先端に行けば行くほど、人間の知性や意識そのものをじっと覗きこんでいる雰囲気が強く出てくるなぁ。結局のところ、それは哲学ということなのだけど。

理論的な部分が始まるまでに、数学者の生態(?)がかなり詳しく紹介されているのも、非常に面白かった。まぁ雑談の多い授業というのはたいてい面白いものだ。

 

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