又吉直樹『火花』(文春文庫)

珍しく、話題を呼んだ芥川賞受賞作品を読もうと思ったのは、先日読んだ宮沢和史『沖縄のことを聞かせてください』に対談相手として著者が出てきたから。

著者自身がモデルと思われるお笑い芸人の話だが、まぁ芝居でもバンドでも映画でも文学でも、表現者を主人公にした物語として普遍性のある作品だと思うが、悪く言えば、ありきたりとも思える。受賞に至ったのは、やはり昨今のパフォーミングアートの中では人気を集めやすい「お笑い」が主題だったからなのかな、という印象。

私自身はお笑いという芸事にほとんどまったく関心がない。それは、実際に見ればもちろん大笑いして楽しめるのだろうけど、本当に自分が面白いと感じるのはまったくオチのない話だったり、ボケもツッコミもなしに延々と続けられる会話だったりするだろうなぁ、と思ってしまうからなのだ。そもそも、(この作品でもそういう設定が出てくるけど)観客の投票によって順位をつけるような世界にはどうにも違和感があって、誰も笑わないけど自分だけが面白いと思うようなネタが本当に面白いのだ、とも思う。ある意味で、この作品の主人公が師匠と仰ぐ神谷という人物は、そういう面白さを追求している(したいと思っている)のかもしれないが。

 

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