新聞に連載されていて、けっこう毎日楽しみに読んでいたのだけど、夏に山の家で過ごすあいだは新聞購読を止めてしまう関係で、最終版の部分を読めていなかったはず。この8月に単行本が出て、kindle版も刊行されたので、改めて読んでみる。
たいして話題にはならなかっただろうし、今後もそれは変わらないだろうけど、なかなかの佳作。新聞小説の王道というか、読ませ、泣かせる。人物の設定も優れているし、けっこう重要な要素である「野球」の扱いもよい。太平洋戦争中~戦後の東京郊外で暮らす市井の人たちの話なのだけど、あれこれ美談を語る人はいるとしても、結局のところ、戦争で良いことなんて一つもなかったのだよなぁと思わざるをえない。
ところで私は著者の名前を「きうちのぼる」と読んで、男性だとばかり思っていた。正しくは「きうちのぼり」と読み、女性である。