以前、何かのきっかけで同じ著者の『おいしい資本主義』を非常に面白く読んで、甥やもう1人他の誰かにもプレゼントするために購入した覚えがある。自分は図書館で借りて読んだきり買っていなかったので、自分用にも買っておこうと思ったら、版元品切れ…。
で、続編に当たる本書を読むことにした。
これまた実に面白い。
思想的な部分は、少しばかり冷静に読む必要がある。たとえば、
頭でっかちの平和主義者の非戦の声も、軽く、実体がない。平和主義者こそ銃を取れ。
という一節があるのだけど、アジテーションとしては一流なのだが、文字通りに受け止めるとナンセンスなことになってしまう。「銃を取れ」は、別に「自衛隊に入ろう」ということではなく、猟をやって生き物の命を奪う経験をしてみろということなのだけど、世の平和主義者が皆、一時的な体験であれ猟銃を手にしたら、国内の猟場は荒廃してしまうだろうし、逆に言えば、国内の猟場が受け入れられる猟師の数より何桁も多い人間が非戦を唱えなければ、そもそも戦争など防げるはずもない。
こういう部分は、一種の思考実験を強いる挑発と受け止めておくのが妥当であるように思う。
「貨幣の物神性から逃れる唯一の武器」として提示される、「人と人がつながる」「無償贈与による交換形式」にしても、そもそも都会的な消費生活こそ、逆にそういう「人と人とのつながり」から解き放たれるための希望だったことも否定できない。だから著者自身、それですべてをひっくり返す革命を志向しているわけでは全然なく、そこで「経済活動の二、三%」を置き換えてみてはどうか、という示唆に至る。
というわけで、そういう刺激的・挑発的な部分については注意深く咀嚼する必要があるようには思うけど、それはともかく、めっちゃ面白いのですよ、この本は。
序盤の「堤」探しのあたりから(ネット地図を駆使するあたりが現代的で非常に面白い)、「完全人力田植え」のあたりなど、とにかく「あの本に書いてあったんだけどさぁ」と人に話したくなるネタの宝庫なのだ。
おすすめである。図書館で借りた上でkindleで買っちゃったけど、これは紙で買い直してもいいかもしれない。