少しこのブログの更新が途絶えていたのは、またLinuxの入門書や将棋の本など読んでいたこともあるが、この大作(文庫本で4巻)に取りかかっていたため。
かつて母方の親戚が名古屋で商売をやっており、市内の住居は店舗兼用で手狭ということで、恵那に週末用の別宅を構えていた。中学生の頃だったか、そこに遊びにいく話になり、近くの馬籠・妻籠といった観光名所を訪れる計画を立て、その予習?として、一家4人でこの作品を回し読みしたのだと思う。このあたりがいかにも教養主義的な家庭である。
2010年に何がキッカケだったのか家人が図書館で借りて読破していたのだが、先日、kindleで無料でダウンロードできることに気づき(青空文庫版)、私も40年近くぶりに読んでみた。
幕末~明治維新期が舞台であり、作品中で流れる時間が恐らく30年以上に渡っている点も大河ドラマ的ではあるのだけど、主要登場人物として登場するのは、この日本史上でも指折りの激動期において「脇役」だった存在ばかり。
それだけに、時代の変遷がいっそう身に迫る痛切なものとして訴えてくる。
これを読むと、主人公が追い求める本居宣長~平田篤胤あたりの国学や、それと合わせて神道にも興味をそそられるのだけど、一昨年あった親戚の葬儀も含めて、神道というのは世界観ではあっても宗教ではないのかなぁ、という漠然とした印象を抱く。少なくとも何らかの救済を与えるものであれば、この小説もこのような結末にはならなかっただろうに。
なお、いちおう下記のリンクはkindle版(青空文庫版)を貼っておくが、やはり通常の文庫で注がついている(と思う)ものを読む方がいいのではなかろうか。宿場・街道関係の知識についてはいろいろネットで調べられる時代だから大丈夫だし、和歌はよいのだけど、それなりの長さの漢文を読むのはなかなか苦労する。