先日、短編集『地球の緑の丘』を読んだ流れで、有名なこの作品に手を出してみた。
う~ん、同じ矢野徹訳なのだけど、こちらは翻訳がよろしくないなぁ。元々の原文がかなり冗舌な感じなのもあまり気に入らないのだけど、その冗舌さが、こなれない訳のせいで、さらにゴチャゴチャしている印象。誤訳はないのだろうけど上手とは言えない。
それはさておき、あらかじめ承知して選んだわけではないのだが、これもまた「人工知能」モノだった。社会の中枢をコントロールしているコンピューターを味方につけてしまえば、そりゃずいぶん革命も楽になるだろうなと思うので物語として良い設定だったかどうかはさておき、けっこう感情移入できるAIである。ネタバレになるのは避けるが、結末でこのAIがどうなっているかという点もなかなか味わい深い。
あとがきで、日本では本作よりも『夏への扉』の方がずっと人気が高いが米本国では完全に逆という話が出てくるのが面白い。そしてもちろん私は(優れた新訳のおかげでもあるが)『夏への扉』の方がはるかに好きだ。