安田浩一『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書、kindle版)

このところ話題になっている移民/外国人労働者受け入れというテーマで、先に紹介した『コンビニ外国人』もとても興味深いのだけど、そういえば、以前からわりと信頼しているジャーナリストであるこの著者がだいぶ前に書いていたよなぁと、この本を電子書籍で入手。

読み始めたら、「あれ、これ読んだことある」……(笑) 2014年に読書記録をこのブログに切り替える前に使っていた「読書メーター」の方に記録していた。読んだのは2012年。

ともあれ、再読。昨今報道で目にする「残業代時給300円」とか「パスポート、通帳強制預かり」とか、そういう奴隷労働的な実態については、すでにこの本の時点で詳細に報告されている……すると、この本の刊行当時から、状況はほとんど何も改善されていないということになる。ひょっとしたら、その後、研修生の出身国が中国から他のアジア諸国へとシフトしているという変化はあるのかもしれないが。

いずれにせよ、奴隷労働、人身売買という言葉がふさわしい実態がこの国にあることを、手に取りやすい新書/電子書籍という形ですでに8年前に世に問うているという点で、高く評価されるべき本だと思う。

なお、本書後半の日系ブラジル人労働者の「デカセギ」については、少し様相が異なる。むろん、彼らが景気変動に対応するための調整弁として使い捨てやすい低賃金労働者として利用されているという問題は深刻なのだが、それでもリーマンショック前の(相対的には)「良かった時代」や、限定的ながら生まれつつある「共生」の兆し、それにかの地に根付いている日系人文化など、ポジティブな要素も見られるからだ(このあたり、著者はやや情緒的に描いているような気もするが)。

というわけで、最近の「外国人材受け入れ」なる論議の前提として基本的な現実を知っておくという意味で、よい本だと思う。憂鬱になること必至だが。

 

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