八ヶ岳方面への往復の電車のなかで読了。
読み始めればすぐに分かるように、本書タイトルの「坂」は、司馬遼太郎の『坂の上の雲』の「坂」とそのまま対応している。『菜の花の沖』や『この国のかたち』など読みたくなる。下り坂には危険も伴うけど、慎重に降りれば悪くないものなのだ。
日本は世界の中心で輝いたことなどなかったし、それ以前に、どんな国も世界の中心で輝いたりしてはならないのだ、という主張がよい。小豆島高校野球部の話もいいし(つい日本ラグビーに引き寄せて考えてしまうのだが)、城之崎のレジデンス型ホール施設の話もいい。本業が劇作家/演出家であるだけに、すぐ「文化」(より端的には「演劇」)の話になっていくところがやや鼻につく感じもあるが(「それでどれだけの人が生活していけるのか」という疑問もあるし)、ひとまず、そこに手掛りの一つがあることはしっかり伝わってくる。
「嫌韓」の分析もけっこう面白い。
著者は、ふたば未来学園高校の創設に関与したことに絡んで、私に近い立場の人たちからもいろいろ批判されていた人ではあるが、その件についても本書中で触れられていて、一読に値する。