日本学術会議の新会員に推薦されたが菅義偉によって拒否された歴史学者の著作。
愚行を「とめられない」状況が迫るなかで、誰かがこの本を挙げていたので読んでみた。
サイパン陥落→日米開戦→日中戦争→満州事変と、時系列的には遡っていく順番で書かれているのだが、さらにもっと先に、日露戦争での「勝利」の記憶が示唆される。確かに、いま愚行を止められない人々も、子どもの頃の「それ」を記憶している世代が中心なのかもしれない。かつての「それ」とはまったく別物になっている、というのも、この本で語られている内容と重なってくる。
それにしても、第二次世界大戦中の日本の死者(軍民合わせて)のほとんどがサイパン陥落以降の終盤に集中しているというのは、負け戦なのだから当然とはいえ、慄然とする。つまり、「ここで止めていれば死なずに済んだ人」が膨大にいた、ということなのだが。