タコやイカなど「頭足類」に分類される生物が、無脊椎動物であることや身体のサイズを考えると異様とも言えるほど発達した神経系を持っており、好奇心や遊戯、個体識別なども含めて、高いレベルの、ただし人間などの哺乳類とはずいぶん違うタイプの知能を備えている、という興味深い事実を中心に、主として進化という観点から「知能・知性はどのように生まれるのか」を考えていく本。
頭足類の生態については未解明の点も多いので、この本だけで何かの結論が出ているという種類の本ではないのだが、それでも非常に面白い。哲学というより生物学の比重が高いけど、たとえばAIについて考えるうえでも示唆に富んでいるように思う。何より、思わず人に話したくなるようなネタの宝庫。
翻訳も、ところどころ気になる部分はあったものの「まぁこう訳さざるをえないか」と思う程度で、全体としては読みやすくレベルは高い。訳者あとがきが、ウェルズ『宇宙戦争』に登場する火星人がタコ型だったことから語り起こしているのも面白い。
図書館で借りたけど、これは買ってもいいかも。